それは、ちょっとだけ未来のお話。
日本は深刻な少子化の問題を抱えていました。結婚したがらない若者に、子供を必要としない夫婦の増加––––––
ほうっておけば近いうちに国民はいなくなってしまいます。
そこで政府は結婚を義務とした新しい法律をつくることにしたのです。
満20歳を迎えた男子は、相手の年齢に関わらず妊娠能力をもつ女性と結婚しなければいけません。
たとえそれが一度も顔を合わせたことのない少女であっても………
オレはいつもより重たい足取りで家路を辿っていた。
今日はオレのはたちの誕生日。
…今日から、うちに妻がくるのだ。

「ああ…かったりい………」

思わず溜息まじりの言葉が漏れる。
オレは気ままなひとり暮らしを続けていたいんだ。
見も知らない女と住むなんて苦痛以外の何物でもない。

「あっ…おかえりなさい!」

はにかんだ笑顔でオレを出迎えた『妻』は、
さまざまに想像していた女と違って…
小さな花のような少女だった。
妻の名は佳子といった。
役所の決定により、遠く離れた街からひとりぼっちで
オレのもとへやってきたのだという。

遅くまでバイトに通うオレのため、
佳子は毎晩食事を作って待っていてくれた。

無理しないで先に寝てていいのに、と言うと
「それが主婦のつとめだって家庭科でならいました」
と佳子は笑ってこたえた。
佳子は無邪気な妹のようにオレを慕ってくれる。
結婚なんて面倒なことばかりだと思いこんでいたが
最近はこんな生活も悪くないと感じるようになってきた。

まだ、彼女を「女」として見るには抵抗が強いけれど。
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